るびりんブログ

鼻に風の当たる場所でなければ、頭がぼんやりしてしまって考えることができない。

常識を疑う:定住生活のデメリット

名著紹介『人類史のなかの定住革命』


書評『人類史のなかの定住革命


秘境を訪ねる探検隊は、文明と接触したことのない種族の「村」を見つける。


ありがちなストーリーである。


私たちは、人は村を作って暮らす生き物であると思い込んでいる。ところが、人に近い生き物であるゴリラ、チンパンジー、オランウータンのいずれも、群れをつくりこそすれ、定住しているわけではない。(もちろん、一定の地域を根拠地とし、そこから外れることも基本的にないのではあるが)。


しかも、私たちほど大きな生物が定住することは、環境負荷の側面からいえばほとんど考えられないことなのである。


それだけではない。定住していなければ、何の問題も生むことのない状況が、重大事件としてのしかかってしまうようになるという大きなデメリットを持つのである。


私たちにとって定住生活を送るということは、逃げ場を失い、流動性を失い、執着を強め、保守管理の雑事を増やすといった悪夢でしかないかもしれないのだ。このことは、遊動を基本として暮している人々の状況を知ることで確実になる。彼らこそが、誰もが夢見る、自由で気楽な生活を送っている人々なのだ。


秘境に住む、もっとも知られていない種族がいるとすれば、それは定住しておらず、部外者の接近を知って移動していってしまう、遊動する狩猟採集者たちであり、村を作ることのない人々なのである。