るびりんブログ

鼻に風の当たる場所でなければ、頭がぼんやりしてしまって考えることができない。

子育てにおける最初の三年間の重要性/養育者との安定した関係

名著紹介『豚と精霊 ライフサイクルの人類学』


書評『豚と精霊 ライフサイクルの人類学

「子供にとって決定的に重要な最初の三年のあいだ、ムブティの母親はいつも子供と緊密な接触をたもちながら、ふたりでひとつの存在であるかのようにすべてをわかちあっている。子供にとってはこの経験が本当に大切である。母親とのこのような関係をモデルにしながら、ムブティの子供は真に社会的な存在として「羽化」してゆく。」



人の暮らしにおいて、収入を得ることが必然ではなく、他の動物たちのように日々の糧を得ることだけで生きていけるのであれば、人はここに描かれたムブティ(森に暮らすピグミー)と同じく、子どもと母親とがふたりでひとつの存在であるかのように最初の三年間を過ごすことだろう。それをできなくしているのが文明社会であるとすれば、文明化に何か積極的に肯定できる意味はあるのだろうか。おそらくは何もない。


コリン・ターンブルが伝えいるメッセージは、ここまで拡大解釈できると私は考えている。


私たちは、実現不可能な夢を追って、元々手に入れていた幸せをなくしてしまった哀れな存在でしかないのだ。