るびりんブログ

鼻に風の当たる場所でなければ、頭がぼんやりしてしまって考えることができない。

若おかみは小学生は大人も見たいアニメ映画だった

児童文学を原作とする映画「若おかみは小学生」が上映されています。
ポスターも子ども向けの絵柄になっていて自分には縁のない映画だと思っていましたが、今世紀最高の映画だったというブログを読んで気になり、たまたま時間があったので見てきました。


prehyou2015.hatenablog.com


死について
このアニメには、身近な人たちの死が描かれています。若くしてこの世を去った人たちがいて、残された人たちがいます。
動物たちにとって、死は身近なものです。一回に数頭の子を生む肉食獣であれば、子育ての途中で子を失うことのほうが当たり前です。子を失ったからといって、嘆き悲しんでいては、残った子どもたちを育てられません。
この映画に登場する、若い死者たちは、そんなことを思い出させてくれました。
かといって、このアニメには、主人公が身近な人の死と向き合い、絶望し、苦しむ様子は、あまり描かれてはいません。実際に身近な人の死を経験した人は、描かれていない点に落胆し、非現実的であると感じるかもしれません。しかし、それは、身近な人の死を受け入れることができないでいる主人公の姿を正確に描いた描写であるともいえると私は感じました。


目に見えない世界について
この映画のもう一つの見どころは、見えない世界の存在です。私は唯物論者で、死んでしまえばそれで終りだと考えています。一方で、私たちの肉体は、世界を生命として理解するようにできており、科学的にいえば生命を持たない物に生命を感じ取り、死者の声を聞き、木の精を見るようにできています。そうした意味では、物理的な世界は私たちにとって嘘の世界で、私たちの肉体が感じ取った生命の存在する世界こそが本物の世界です。
この映画に描かれているのは、そうした目に見えない生命の世界であると言えます。もちろん、物語ですから、上に書いたような説明を超える具体性を持っています。その点は、創作物である以上どうにもならないでしょう。
ピダハンは、精霊の姿を集団で目撃するといいます。その精霊のすがたを白人であるエヴェレットは目にすることができません。私は、動物と同じような暮らしを続けるならば、人も大人になっても精霊を目にし続けることができるのではないかと考えています。
このアニメには、神社が頻繁に登場します。私たちにとって神社という場所は、大きな木に囲まれてフクロウやヘビやムササビが住むところです。日本人にとって宗教は、そうした自然環境と切り離せないものです。目に見えない世界と目に見える世界をつなぐ場所として、神社は欠かせないものであることを思い出させてもくれます。


小さな生きものたち/医食同源/ライトアップにご注意/占い師
このアニメでは、他にも、よく考えて作られているなというシーンがたくさんあります。それが上にあげた点です。


まとめ
何よりも、シリアスになりすぎないように、コミカルなシーンが挟まれていることで、涙をながしながらもすぐに笑いに戻れるところが最高でした。
多くの死をとりあげながら、忘れさられ、商業化され、否定されていく、日本人が昔から大切にしてきた見えない世界の大切さを伝えてくれている映画だと私は受けとめました。