アルピニズムと死
野生の熊を直接見たことのない人のほうが熊を怖がり、*
死に行く人を送ったことのない人のほうが死を恐れる。**
夫婦ともにアルピニストとして有名な山野井夫妻の夫のほう、
山野井靖史さんが、アルピニズムと死について本を出している。
驚くことに山野井さんは登山人生のごく初期に
滑落事故で死亡する人を直接抱いている。
それだけでなく自身も何度も危険な自己を経験し、
ひどいケガを負ったり、
凍傷で多くの指を失ったりしている。
極めつけは雪崩に巻き込まれた事故である。
窒息の恐怖に包まれながらも
ただ運がよかったという理由で助かったのだ。
それでも彼は登山をやめないどころか、
山でこそ生命の躍動を実感している。
死と向き合うことの少なくなってしまった私たちが
思い出す必要のある、恐れる必要のない死の姿がここにはあると
私は感じるのである。
名著紹介『アルピニズムと死―僕が登り続けてこられた理由』
*書評 『オオカミはなぜ消えたか—日本人と獣の話』
**書評 『★看取り士—幸せな旅立ちを約束します』
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