群れを作れば強くなるが、分業は個体の幸福度を下げる
『ハキリアリ 農業を営む奇跡の生物』を読んだ。
ハキリアリの話ばかりではなく、より広く社会性昆虫全体の話や、葉を切ることはしないで、落ち葉を利用する近縁種の話などが書かれており面白い。
中でも感心させられたのが、社会性昆虫は単独生活の昆虫たちよりも優位であり、より快適な環境を占めているという話だった。
確かに多勢に無勢では勝ち目はなく、社会性昆虫が勢力を増していくのは納得のいくところだ。
人類史においても同じようなことが起きている。
ヒトの本来の生き方である狩猟採集社会は人口密度がまばらで基本的に家族単位の行動になり、団結力も弱い。これに対して農耕民は人口密度が上がり、集団をまとめる力も強いのだ。そしてご存じの通り、狩猟採集生活は農耕民たちが土地を拡大するに連れて追いやられて行った。
しかし、集団が拡大することで、個々人が主体性や総体性を失って行っているのも事実である。それはハキリアリのような社会性昆虫が規模を拡大するに連れて分化が進み、専業化されていくことに似ている。
さまざまなことを自力でやるのは大変だが、それによって生きる実感が生まれる。生きる意味を知る。しかし、そのような生き方を望んだところで、単独生活者が集団生活者に勝てないのは昆虫の世界でも哺乳類の世界でもおそらくは同じなのである。
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