るびりんブログ

鼻に風の当たる場所でなければ、頭がぼんやりしてしまって考えることができない。

新天地

新天地を求める旅は苦しかった。


淡水のない環境
水中での出産と授乳
呼吸の苦しさ。


それでも新天地は、豊かであった。
そうして仲間が増えていった。


豊かだった新天地の競争が激しくなる中で、
あるものは、深海へと進んだ。


マッコウクジラは反響定位(エコーロケーション)に用いていた脳油を、
別の用途にも利用した。


脳油が体温では液体、
海水を取り込んで冷やせば固体になる性質を利用して
垂直潜水を可能にしたのである。


しかも、潜水病にかかることもなく、
水深2000メートルまで短時間で潜水し、浮上することができる。
マッコウクジラは生涯の3分の2を深海で過ごすといわれている。


マッコウクジラが、こうした、超哺乳類的な生き方を実現したのは、
どこまでも肉体によって環境と闘い続け、
生き残りをはかり続けた長い年月(6000万年)があってのことだ。


しかも、新天地に適応した者だけが命をつないできたからこそ
今があるのだ。


新天地を求めて肉体を大改造した
クジラたちの生き方は、
私たちに問いかける。


道具を使って肉体を衰えさせている私たちに未来はあるのか。
道具を使って新天地を切り開く私たちは横暴ではないか。
道具を使って命を助けることは長い目で見て正しいことなのか。
肉体はどれほどの可能性とそれゆえの危険性を秘めているのか。


新天地を目指したクジラは多くのことを教えてくれる。